30th EP7

-前回のあらすじ-

古き良き当時の小倉の気質。慣れ親しんだこの小さな街も遊ぶ場所が変わればそこは別世界で。切り開くには広く果てしなく感じてた。大袈裟だけど「知らない」というのはそういう事でした。

時代かな。情報が少ない分、オリジナリティに溢れた個性的な人が多かったと思う。地元の箱 G-SPOTをやってた伊崎くんもそう。顔面はやや寅さんかな。今もこの北九州で新しい事にチャレンジし切り開いてるカッコいい人。

ひとつ思い出を話すとある朝方のG SPOT。フロアの隅で女の子に激しくキスを迫ってて。その顔面がフラッシュライトでフラッシュしてたのは、ほんの少しだけ気持ち悪いなと思ったかな。

ある時、そんな伊崎くんから友達伝いに話がしたいと連絡あって店へ。

イベントへの誘いだった。東京からゲストDJ。そのサポートDJをという事で。ゲスト?サポート?当時の俺はそんな感じで。経験のない事だったけど深く考えずにOKしたと思う。DJしたい。それだけの気持ちで。

本番当日はゲストを楽しみにした人で溢れてた。初めましてのG SPOTのフロア。

この夜の最初の一曲は今でも覚えてます。酒が進むにつれ大声の野次や冷やかし。ゲストの名を呼ぶコール。そのうちそれにも飽きたフロアは広く空間ができて。永遠にも感じる二時間。

たまに酔ってこの話すると「またその話〜」と姉さんに笑われるんだけど。そんなフロアのど真ん中でプレイの最初から最後まで踊ってくれたのはたった二人。ダブルソウルの姉さんとキャサリン。

交代後、爆発するフロアの歓声。ゲストDJのプレイをステージ裏で聴いてた。そこから出れずに居て。そういう状況をどうすべきなのか。そこまではラジオのテープも教えてくれない。自分で考えるしかなかったんですね。経験が必要だった。

同じ頃。クイックをシンジが受け継いでディゴバという箱に。シンちゃんはソウルの塊みたいな男で。外側じゃなく内側(音)を聴いてくれた数少ないひとり。そのディゴバ での初プレイも印象的だった。

その日も賑わう夜。DJ交代の合図、レコードバッグ片手にフロアをかき分けながらブースに向かおうとした時。いきなり「ドン」あからさまに肩当てられ。振り返ると知らない顔が3人。こっち見て冷やかし笑ってる。

予想外の出来事だった。お洒落な人がお洒落に集うお洒落な場所。まだ数える程だったけど。それが俺の中のクラブのイメージだったから。

なるほど。そういうノリね。そのノリなら俺もよく知ってる。

その夜は一時間。その3人はフロアの真ん中で腕組み。5人、6人とプレイを終える頃にはその輪は徐々に増えていって。一瞬に感じる一時間だった。殺気立ったおかげでむしろ集中してたのかも。

次のDJに交代。ラスト一曲のレコードをバッグにしまいブースの階段を降りて。その足で迷いなく「ドン」その輪の真ん中を両肩で割って。これがディゴバ での初めまして。

上手く切り開けないなら割るしかない。

この頃の出来事がさらに。その後の力に繋がったと思う。その力は大きな出逢いに繋がり。それはまだ少し先の話で。

少なくともこの時は聴かない奴はゼンインシネ。そう思ってた。

I&I