30th EP18

前回のあらすじ-

この当時、使ってたDJセットは人に借りてたもの。入ってる間に持ち主が取りに来たらしく。数ヶ月振り。自宅に戻ると機材はキレイに無くなってた五月晴れの日。

自分の機材はというと。逮捕より少し前。EP15の後くらい。並んだ二台のターンテーブル。そのアームを両手でへし折り。ミキサーはバットで叩き壊し。ベランダから投げ捨て。うん。まともじゃない。

その後は友達や知り合いに機材を借り繋ぎ。この日に。

元々。一日休むと勘が戻るのに三日かかる鈍臭い人間で。出所後もDJの誘い。数ヶ月のブランク。毎回ただジャケットを眺め。レコードをバッグに詰めるだけ。準備も出来ず現場に向かう。結果は明らかで。

フロアの一番後ろでN9のライブを聴いた夜。バックDJはヤッチー。本当に良いライブでね。そのステージがその距離以上に遠くに感じたのを覚えてます。

DJ始めたばかりのKOUICHI the NATURALとの出逢いがこの頃で。慣れるとお喋り。人見知りの特徴かな。コウイチもそのタイプだと思う。ワードセンスもツボで。音楽への好奇心に輝いてて。

俺自身は。それまでの生活とは真逆で。そんなコウイチの車で出かけたり。遊びまくってた。クラブ行けば。酒飲んで調子乗って。女の子にちょっかい出したり。朝まで沸いて。

紛らわしてた。違うな。ただ単に逃げてた。ダサいよね。そう感じてるのは他でもなく自分。カッコ悪くて。弱い。自分自身。

逮捕から半年が過ぎた頃。使ってない機材があるから。

そう言って譲ってくれたDJセット一式。彼女はプリングルスの友達で。コウイチが付けたあだ名がひーたん。今。人生を共に。これがまた昭和生まれ小倉育ちのダメなところで。心からの感謝は心の中で。本人に伝える事はないんだけどね。

古いカセットテープの中に。練習を録音したものもいくつか残ってて。これはあのミキサーだ。スクラッチの音を聴くと分かるんですね。

この空白の半年に向き合うのは正直キツイ時間だったけど。機材の前に立ち。このテクニクスのミキサーが壊れるまで。使い潰して。

ほんの小さな出来事や場面にも。始まりがあり。終わりがあって。そこに辿り着いた時。振り返り。そういう事だったんだと。答えは。探すものじゃなく。気づく事なのかも。

ここからまた。この街の話。この街の人の話へ。

I&I