30th EP5

-前回のあらすじ-

DJブースから縦に伸びる空間。応援に来てくれた友達の顔すら見る余裕がなかったけど。始める前と終えた後。場や人の空気感もほんの少し変わってた。自分自身も。一回きり。じゃなく回を重ね、下関という街がホームになってくんですね。

地元小倉でも少しずつ足を運ぶ場所が増えて。ダウンビートもそのひとつ。棚の一角に10枚程度だったけど新譜のヒップホップが買えるレコードショップは当時の小倉では貴重だった。それをケンちゃんと取り合いで買って。

毎週毎週と足を運ぶうちに顔と名前も覚えてもらって。テープ持っていって聴かせてみたり、歌ってみたり、説明になってない説明で欲しいレコードを伝えて。そのうち棚には新譜が並んでいって。

佐々木さんはぶっきらぼうで毒舌だけど本当に面倒見の良い人で。俺たち世代全員がそうだと思う。金なくて散々取り置き流しても「あんたはこれやね」って常に新しいものを教えてもらってた。

うちにある90年代のレコードのほとんどがダウンビートで買ったもの。今だから分かるんですね。あの時代の情報量であれだけの物を揃えるリサーチ力。ひとりひとりの好みや今聴くべき音を理解してくれてた。

振り返ってみるとこの頃かな。見様見真似、聴様聴真似から本当に自分の好きな音。それが見つかり始めたのは。この時期作ったミックステープが奇跡的に1本だけ残ってて。そのテープには今でも好きな Heaven & Hell が。

同じ頃。現在小倉の老舗BARコットンダンサーを営む澄川さん。この人が以前やっていたBARクーゲルにも遊びに行って。年の瀬というのもあり流れでバイトする事になって。

澄川さん自身がReggaeのセレクター。この店はレゲエをはじめ、根っからの音楽好きが集う場所。セレクターやDeejayにスケーター。とにかくカッコいい人たちばかりでね。小倉で初めて針を落とす事が出来たのもこの場所がキッカケで。

時は1994年から1995年へ。

BananaMuffinのゴッチン、ケンちゃん、幼馴染みの太郎のライブ。そのバックDJに誘われて。結末から話すと本番前に必ず太郎が消えて、ケンちゃんがリリック全飛ばしするのをゴッチンがフォローするというライブを計4回くらいやったかな。周りはクーゲルファミリー。温かい人たちばかりだからむしろ盛り上がるっていう。

場所は安田さんのやってたQuickという箱。

本番を迎える数週間前。準備中の時間に一人Quickで音リハをお願いして。正確にはこの日が小倉で初めて針を落とした日。天井高く積まれたサウンドシステム。フロアが見渡せる高いブースの後ろにはラックに並んだパワーアンプ。この頃はひとつひとつ初めてを学ぶ時期。

Flava In Ya Ear Remix のインスト。緊張に震える手でレコードのマーキングに針を合わせてフェーダーを。一発目のキックが鳴った瞬間に驚いて後ずさり。慌ててフェーダーを切ったのを鮮明に覚えてます。その音のデカさと太さに。

本物のクラブの音。衝撃だった I&I